朝、整髪料の匂いで、階下の父が起きたのがわかる。

いままで気にも留めていなかったんだけれど、父は数十年来同じ整髪料を使っているらしい。そういえば、なんか付けてたっけ?というくらい気にしてなかったんだけど。今年の夏、頭に湿疹ができて、60年ぶりという五分刈りにした父なのだが、長年の習慣で起きたらついその整髪料を付けてしまうらしい。

病気をしてからの父は、朝はゆっくりでどうかすると昼前まで起きてこないこともある。またその眠り方も静かで、あんまり静かなのでドキドキすることもある。だから、朝、それがほんのり匂ってくると、あ、起きたな、今日は普通に元気だなとわかって安心する。

先週から父は入院している。
潰瘍ができて出血しているので経過を見ながらの入院なのであまり心配はいらなそうなんだけれど、父が不在だというのに、家の中のあちらこちらで父の匂いがするのだ。
玄関から廊下へ入るあたりで特にその父の整髪料が匂ってくる。なんでこんなとこで?と不思議だったんだけど、どうも、その廊下のはいり口に下がっている木製の暖簾、これが匂いの元みたいだ。
そうだ、いつも父は少し腰を屈めて頭でこの暖簾を分けてここを通っているんだった。考えたらこの暖簾も40年以上ここに下がっている。父の整髪料の匂いがこの玉暖簾に移っていたんだなぁ。

父が家にいるときは気がつかなかった。
不在だからこそ匂うんだなぁと思うと少し切ない。



コメント

はち
2009年10月23日12:19

数年前に亡くなった祖父母の家には、台所から廊下に出るところに芹沢銈介ののれんがかかってました
そののれんに匂いの思い出はないけど、街で芹沢模様を見るたびに、祖父母のことを思い出して、しんみり
僕ののれんの思い出です

美藤
2009年10月26日13:46

自分で選んでそこに掛けたものでもないし、高価なものでもなんでもないものなので気にも留めずにきたわけですが
「ずーっとそこにあった」ということの凄さ(凄さというのも大袈裟ですが・・)にある日突然気付いたりするもんなんですねえ。

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