しゃれこうべ

2011年8月27日 日常
駅へ行く途中に、空き家の裏庭の横を抜ける細い路地がある。通勤の近道で、ときどき通っている。

7月の中頃。その裏庭の片隅に白い小さなしゃれこうべを見つけた。フェンス越しにちらりと見ただけで、立ち止まったりもしなかったのだけれど、しゃれこうべだって、はっきり判ってしまったのだ。

父の病状が希望のないものになってきていた時期だったから、厭なもの見つけてしまったと思った。それは夏前に生まれて、近所を駆け回っていた野良の子猫の一匹のようだった。カラスにでも襲われたのかもしれない。少し前まで生きていたものの骸。気持が沈んだし、とてもとても厭だった。

お清めの塩か水でも撒こうかとちらと考えたけれど、そんなことはしたくなかった。信心深いふりも、敬虔な人間の真似もしたくはなかった。そんな行為をしてなにかの存在を認めたくはなかったから。
でも、その道を通るのをやめることもできたのに、なぜだろう、その後も通らずにはいられなかった。歩を緩めず、立ち止まらず、視野の片隅にちらりと収めて通り過ぎるだけだけれども、見つけてしまった骸が朽ち果て崩れて散ってしまうまで付き合わないではいられない気持だったのだ。ほかにしようがなかった。

父のことがあって2週間ほど仕事を休んだので、しばらくその路地を通っていない。あの幼子のコブシくらいのしゃれこうべ、細い華奢な骨、今日の大雨に洗われて土に帰ってくれていたらいいのに。もう、終わりにしたい。


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