蜜柑と檸檬

2011年9月22日 日常
庭に根を張った樹々は、毎年花をつけ、実もつけてくれるけれども、その年ごとに随分と様子が違っている。

昨年、鈴生りに実って、ひと冬味わうことができた蜜柑が、今年はまったく実を結ばなかった。花そのものが数えるほどしか咲かなかった。昨年6月にあまやかに鼻くすぐった蜜柑の香りを今年はかがなかった。
「もう蜜柑が咲いてるだろ?」と病院で父に聞かれ、「去年、生り過ぎたか」「収穫後の肥料が足りなかったか」とふたりで話した。退院したら剪定をしよう、と言っていた。

父は木に咲く花と、実の生る樹が好きだった。

一昨年春、裏の物置の脇で育ち損なっていた檸檬の木を陽当たりの良い場所に植え替えた。「この檸檬はなんで実がつかないんだろうなあ」としきりに首をひねるので「檸檬は陽当りのいい乾いたところが好きらしいよ」と付け焼刃の知識を披露すると、何日か後に引越しが済んでいた。
ちょっと強引過ぎたのか、その後、常緑樹の檸檬がすっかり葉を落としてしまって心配したけれども、昨年の春からは元気に葉を茂らせて今年は花も咲き、実も生った。檸檬というにはずんぐりと丸い大きな実。
実が生ったことを父に話したのは、7月の終わりで、もうモルヒネを入れて痛みを抑えていたときだったので、ちゃんと伝わったかどうか・・。「うん」と言って、うなづいたように見えたけれど、私がそう思いたかっただけだったかもしれない。

父の棺に緑色の檸檬をひとつ入れた。


秋が始まって、この時季の父の庭仕事がどんなものだったか思い出そうとするのだけれど、不肖の弟子はちゃんと親方の仕事を見ていなかったので、さて、と途方に暮れている。せめてあれこれの樹々を枯らさないようにと思うのだけれど。


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