昭和30年代の15万円って、いったい幾らなんだろう。
国家公務員の初任給が9000円くらいだったようだから、今だったら20倍したくらい? 300万? えー??

父が愛用していた時計の話。
オメガのシーマスターをずっとはめていた。勤め先のオーナーがヨーロッパへ行くことになって、オメガの時計を買ってきて欲しいと頼んだのだそうだ。その時計に15万払ったと言っていた。
半世紀は前の話。その頃は1ドルは360円だったのかな。円の持ち出しに制限はなかったのかしら?そもそも、渡航は自由だったのかしら?高度経済成長期で景気は良かったようだけれど。

時代だなぁ、と思う。舶来品なんて言葉、いまは死語だけれど、半世紀前の青年のあこがれだったんだろうな。
私が生まれる前からこの時計は父の左手首にあったんだ。仕事を引退してからは腕時計をすることもなくなったけれど、時々取り出しては、買ってきてもらったときの話になった。だから私は、形見に貰うからねーなんて言ってた。
ほんとうに形見になった。

自動巻きなので、使われなくなってから止まったままになっていたけれど、手に持って軽く動かすとバネを巻き上げる軽やかな音がする。時間を合わせて、今日一日左手にはめてみたら、きちんと時刻を刻んで動く。すごいね。
数十年、仕事をする父の腕にあったので、ガラスのフェイスは傷だらけだけれど、18金なのかな、フレームや竜頭はアンティークな風合いになっている。
小ぶりで、文字盤も12の金のポイントと長針短針秒針だけのシンプルなものなので、私が使ってもいいかなと思う。革のベルトを変えて、仕事用にしようかな。自動巻きだから仕事のときに使わないと止まってしまうから。

チクタクチクタクチクタクチクタク・・。
耳にあてると、デジタル時計にはない時を刻む音が聞こえる。クォーツ時計とも違う、速いリズムだ。バネを巻く音、解けてゆく音、精巧に組み立てられた器械の鼓動。とても耳に心地良い音がする。

300万とはとても思えないし、骨董ともいえなさそうなただの古道具だけれど、良い時計だと思う。


そういえば、シーマスターの裏蓋にあるエンブレムはシーホース。タツノオトシゴだ。辰年の、年が明けてからこの時計を目覚めさせたというのは、符丁としては悪くないかな。

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