もういいよ、と父は言った。
もういたいのいやだ、と。
いたいのいやだ、子供のような言い方で。
その日のうちにモルヒネを最大量まで点滴で入れ、血圧を上げる薬などは最小限に減らした。
いたいのいやだ、と言ったその腹部の痛みはもう感じてはいないはずだったけれど、もう酸素を上手く取り込めなくなった肺では息を吸っても吸っても息苦しく、浮腫んだ手足はだるくてだるくて辛かったろう。
上機嫌で鼻歌を歌いながらモルヒネの見せる夢の中で遊んでいたけれど、無意識に腕や脚を力なく叩いて眉をしかめていた。もう全身が不快感に侵されていて、なにもかもが苦しかっただろう。
もういいよ、と父が言ったとき、まだだめ、まだだめだよ、と思ったけれど言えなかった。
もうとうにわかっていたのに、父が呼吸を止めるその時を迎えたくなかっただけ。死ぬその時を見たくなかっただけ。私が。
父がもういいよと言うのなら、苦しくてもここにいてとは言えない。
モルヒネを入れてからも10日。残った生命のエネルギーが父を苦しめた。もういいよ、って言ってたのに。
もういたいのいやだ、と。
いたいのいやだ、子供のような言い方で。
その日のうちにモルヒネを最大量まで点滴で入れ、血圧を上げる薬などは最小限に減らした。
いたいのいやだ、と言ったその腹部の痛みはもう感じてはいないはずだったけれど、もう酸素を上手く取り込めなくなった肺では息を吸っても吸っても息苦しく、浮腫んだ手足はだるくてだるくて辛かったろう。
上機嫌で鼻歌を歌いながらモルヒネの見せる夢の中で遊んでいたけれど、無意識に腕や脚を力なく叩いて眉をしかめていた。もう全身が不快感に侵されていて、なにもかもが苦しかっただろう。
もういいよ、と父が言ったとき、まだだめ、まだだめだよ、と思ったけれど言えなかった。
もうとうにわかっていたのに、父が呼吸を止めるその時を迎えたくなかっただけ。死ぬその時を見たくなかっただけ。私が。
父がもういいよと言うのなら、苦しくてもここにいてとは言えない。
モルヒネを入れてからも10日。残った生命のエネルギーが父を苦しめた。もういいよ、って言ってたのに。
コメント
うちの猫ももういいよって言ってくれたらなぁ・・・・・・・。
もういつでもいいんだよ、って。
父のモルヒネの点滴装置は傍らにあって、1日量が装填されていました。この全量を1度のフラッシュで入れてあげたら・・と何度も考えました。死に向かう際の医療については思うこといろいろあります。
ありがとうございます。
ご意見も参考にさせて頂いて、たくさん考えようと思います。